いや、そのりくつはおかしい。(自炊代行業者提訴に関して)

東野圭吾ファック!!マジファァァァァァァァァァァック!!!
って今思ってますけど、とりあえ落ち着こう。

東野圭吾氏や弘兼憲史氏が自炊代行業者を提訴
http://yro.slashdot.jp/story/11/12/21/0038206/%E6%9D%B1%E9%87%8E%E5%9C%AD%E5%90%BE%E6%B0%8F%E3%82%84%E5%BC%98%E5%85%BC%E6%86%B2%E5%8F%B2%E6%B0%8F%E3%81%8C%E8%87%AA%E7%82%8A%E4%BB%A3%E8%A1%8C%E6%A5%AD%E8%80%85%E3%82%92%E6%8F%90%E8%A8%B4

逆の明文化となるか:東野圭吾さんら作家7名がスキャン代行業者2社を提訴――その意図
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1112/20/news100.html

「売ってないから盗むのか! こんな言い分は通らない。私は電子書籍が普及しても、こうした違法スキャン業者はなくならないと個人的に思っている」(東野氏)

なんかもう違法って断定されちゃってんのがあれですけど、それにしても買った人間に対して盗人扱いとは作家先生もずいぶんひどいじゃないですか。・・・ファック!ペッペッ!
なんか訴える相手違ってませんかね。盗んでるってのは要するに違法アップロードされたデータとかでしょ? 代行業者に頼む人はそもそも自分でお金出して買った本をスキャン頼んでるだけなんですけど。
本買った上に更にお金払ってデータに変換して読みやすいようにするなんてよほどの本好きですよ。そういう読者を敵に回してしかも第三者の代行業者を訴えるってどうなの。だいたい違法なスキャンデータなんて自炊が流行るずっと前からあったし代行業者がいようがいまいが関係ないよ。

容疑者Xの献身とか名探偵の呪縛とか、面白かったのになあ。好きな作家さんがアレだったと思い知るのは悲しいものですね。

■僕は自炊派です
えっと、僕はもう長いこと自炊派で、自宅にあった本屋さんで買えるような本はほとんど自炊しました。背丈ぐらいの本棚2つなくなりました。

裁断した本はそのまま古紙回収か、燃えるゴミです。裁断した本がオークションで結構な額になってるの見て売ろうかなあと思ったけど、それはさすがにやめました。個人的には、裁断済みの本の売買ですら完全にモラルの問題で、法律がどうこう言える部分は一切ないと思っていますが、それはまた別の話ですね。

もっぱら自炊は自分でしかやりません(変な言い方……)が、どんなものか知るために代行業者にも頼んだことがあります。
BOOKSCANに漫画のスキャンを頼んだ結果。

業務用スキャナを使ったスキャンは特にカラー原稿などでとても綺麗だし、自炊の手間を考えると料金も安く、僕のように自炊そのものを半分趣味みたいに楽しみながらやってる人でもない限り、とても便利に利用できる素晴らしいサービスです。

■自炊は本への愛そのもの
本を裁断するなんて本がかわいそう、本への愛はないのかなどとのたまう方がたまにいますが、それは全く逆ですよ。愛があるからこそ自炊するんです。
自炊をやったことない方は「本を軽々しくコピーして」などと思っているかもしれませんが、それも全く違います。自炊は並々ならぬ労力と時間、そしてそれなりの技術も必要で、軽々しくできるものではありません。

道具を揃えるのにもお金が要ります。まずスキャナに四万円弱、大型裁断機に一万から三万ほど、さらにソフトウェアはフリーのものもありますが、僕の場合はバッチ処理用にPhotoshop、PDF作成用にAcrobatを使っています。スキャナや裁断機よりもそれなりのお値段です。
ちなみに、これら自炊の道具を置く場所だって部屋に確保しないといけません。裁断機とかめっちゃ邪魔なんですよ。重いし。

いざ自炊ったって、まず本を裁断し、さばいて、紙詰まりを監視しながらちょっとずつドキュメントスキャナに読み込ませ、カバーは別途スキャンします。カラーとモノクロ原稿が混ざった本に関しては、カラーページはカラー、モノクロページはモノクロ設定にいちいち切り替えて読み込みます。そこまでしてる人は少ないかもしれませんが、仕上がりがキレイになるので。
やっとデータになった所でここからが本番です。丁寧にパラメータを調節し、読みやすい様に補正します。もちろん本ごとに調整具合は変えないといけませんし、ページごとにも違ったりしますが、この作業で読みやすさが決まるので頑張ります。
そのまま読める程度に綺麗な画像になったら、PDFにまとめて、OCRをかけて検索できるようにしておきます。パソコンの性能いかんですが、かなりの時間がかかります。

この様に一冊に対して並々ならぬ労力と時間をかけて自炊し、データに変換しているのです。そこまでして読みたい、そこまでしていつでもどこでも読める様にして持っていたいからこそ自炊します。読んだら本棚にしまい込んで終わりにしたくないからです。ふと思いだしたときにすぐ読み返したいからです。

サイショカラ キンドルミタイナ リベンセイノタカイデンシショセキバンガアレバネー(棒読み)

■私的複製の問題と、違法流通の問題がいっしょくた
そもそもの問題は「私的複製の範囲内か」ということだと思います。大前提として、本を買った人が自炊行為を行うのは何の問題もありません。
これを業者が代行するのは、複製権の侵害になるのではというのが今回の訴訟の根っこだと思われます。代行業者は本を買った人ではないから複製は許さないと彼らは言っています。

しかし、代行業者はあくまで「代行」業者です。本を買った人に依頼されてスキャンを代行しているに過ぎません。僕が買った本を僕がコピーするならOK。でも、コピーしといてと人に頼んだらダメということですね。お母さんに頼むのもダメなの? 例えば僕が怪我して動けない時で、ちょっとひとっ走りコピーしてもらうのは? 怪我ならまだしも、何らかの障害でコピー作業がそもそもできない場合は? 代行がダメなら、そういう人は私的複製できないことになってしまいますね。そんな不公平な話あるでしょうか。
お金をもらって代行するのがダメ? じゃあ秘書とかは? お金もらってるよね。

その部分だけでは弱いからか、「スキャン代行は市場に悪影響を及ぼす」「海賊版の普及を食い止めなければならない」など、今回の訴訟はこれら別問題を一緒くたに、あたかも代行によってそれらが起きている様に述べています。複数の問題はわけて扱って欲しいですね。

いずれも、スキャンされたデータはすべて海賊版として出まわるのだ、という前提がないと成り立たない訴えですが、そんなことねーべよ。業者の場合、依頼を受けてスキャンしたものを出まわらせたりしたらそれこそ大事です。真っ先に自分の首を締めることになるので絶対にやらないはずです。やる意味が全く無い。
一度スキャンしておいたデータを取っておいて、同じ書籍の依頼が来たら過去にスキャンしてるデータを渡してるんじゃないか、なんて疑う人もいるみたいですが、そんなバカな。スキャンされたデータに落書きがなくなってればすぐバレて訴えられちゃう。落書きがなくても版数ですぐわかっちゃいますしね。あまりにナンセンス。
それとも、今回訴えられた代行業者がこのような悪いことをやってて、その証拠をつかんでるとか。それはないか。そうするとまっとうな代行業者はOKっていうお墨付きになっちゃいますもんね。

個人の場合、違法に放流されている動画データなどのように、スキャンしたデータをアップしている悪い人もいるでしょう。しかし、それは全く別の問題です。たとえ代行業者に依頼したデータが違法にアップロードされたからといって、それはアップロードした本人が悪いのです。代行業者は関係ない。だいたい、違法アップロードするような人は代行業者に頼まないでしょ……

作家や著作者の利益の話なら、僕は自炊するようになってから一切古本屋に売ることがなくなりました。以前は読み終わった本を売ったりもしていたけど、今は読み終わったものもとりあえず全部自炊するようになったからです。これって古本屋への流通数が減る→読みたい人は新品を買ようになる、だから権利者にはむしろいいことじゃない? 違うの?

■電子書籍について
ちなみに冒頭の東野圭吾の言い分ですが、おそらく、電子書籍の整備が遅れていることについての返答的なものだと思いますが、少しだけ弁護をすると、電子書籍の整備が遅れているから代行業者が……というのがそもそも的外れですよね。

もちろん電子書籍整備の遅れがあるからこそ自炊代行業者がたくさん立ち上がるようになったんだとは思いますよ。これだけ自炊自炊ってなったのはアメリカみたいに電子書籍に本腰入れずに読者を紙媒体に縛り付けてきたツケだと思います。それならもういいよ、自分で電子化するよって。

ただ、電子書籍が流通しようがしまいが自炊する人はするし、作者側にだって出版形態を選ぶ権利はあります。電子書籍なんかいやだ、俺の本は紙で読んでくれってんならそれでいいと思うし。
当然それに対して、買った人にも好きな方法で読む権利があって、そのまま読もうが自炊してから読もうが自由なわけです。だいたい自炊がダメとは原告も言ってないし。ただ、それを自分でやらないからダメというのはちょっとなあ。自分で自炊しようが業者に依頼しようが、自分が読むためなんですけど?
言い分にある「盗むのか」はもうトンデモ過ぎて話にならないです。出版社と、作者と、読者と、代行業者と……どの辺に盗みの話があるんですか?

そういえば、Amazonが日本の出版社に対しても電子書籍化の条件を突きつけてきたという話がありました。
「こんなの論外だ!」アマゾンの契約書に激怒する出版社員 国内130社に電子書籍化を迫る
http://blogos.com/article/23880/

これが本当だとすればあまりに強引な条件だったので、出版社にずいぶんと同情したものですが、今回のように意味のわからない訴訟などを起こしている限り、やっぱり既得権益中毒のバカなんだなと思うほかありません。


だらだらとまとまりがない文になってしまいましたが、結局あれですよ、お前ら客は悪いことするに決まってるだろみたいな決め付け。CCCDコピーコントロールCDもそうだったけど、違法にアップするに決まってるみたいな見下された感じ。音楽業界と一緒で、正規に購入した客だろうが悪いことするに違いない、それを聴く方法はこっちで決めると縛り付け、本当に悪い人は野放しみたいな。そういう「感じ悪い」ところが今回の件でも見え見えだから僕みたいな人が釣られてイライラしちゃうわけですよ。ぷんすか。

ユーザーの利便性とか一切無視してコピーガードに必死になってるうちにiTunesにごっそり持ってかれたのを見てなかったんすかと。言いたくもなるわけですよ。もー。
まあ、iTunesの場合はiPodっていう最強のプレイヤーとの合わせ技があったからこそかもしれないけど、ホラホラ、Kindleって最強のリーダーがもうあるし。

あーやだやだ。

自炊代行を提訴する作家の偽善〜再販制度での裁断本のほうが遥かに多いゾ
http://blogos.com/article/27476/?axis=t:5523

一方そのころスイスでは。
スイス政府の決断、非正規ダウンロードでも合法
http://www.zaikei.co.jp/article/20111206/88721.html

「消費者行動の変化に適応しなさい。さもなければ死になさい」

3件のフィードバック

  1. 愛知県名古屋市の自炊代行業者です。もともとパソコンサポートが主業務ですが、私自身自炊をしていた本を愛する人間です。自炊を広めたいという思いでこの業界に参入したとたんに著作権での騒ぎです。違法だの何だの言われるのは心外ですし違法だと言われる方々の理屈が理不尽と言っていいレベルだと思います。ブログに少し私どもの立場を述べようと思いネットでの意見などを拝見いたしておりましたところ貴殿のページを目にいたしました。すばらしい。そのとおりですよ。
    ブログでこのページを紹介させていただきたいのですがよろしいでしょうか。http://www.imaiku.net/wp/
    というか早くしたくてすでにやってしまいました。ご都合が悪ければ即刻削除いたしますのでご連絡いただけないでしょうか。ご無礼を失礼いたします。

  2. 紹介していただいて全く問題ありません。
    つい先日、提訴されていた業者のうち一社が訴えを認めてサービスを中止するというなんともやるせないニュースがありましたが、他の業者がこういった理不尽な脅しに臆することなく、ユーザーのためにサービスを提供していって欲しいところです。頑張ってください。

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