【感想】「ファーゴ シーズン1」なんと言っても山路さんのビリー・ボブ・ソーントン。

ファーゴと言えば、独特の雰囲気を持った映画で、シュール、不条理、悲喜劇といった言葉で表されるかなーと思います。コーエン兄弟の代表作であり、美しい雪と凄惨せいさんな血、善良な妊婦の警官と人殺しも意に介さない悪党といった様々なコントラストが印象的な映画ですネ。片田舎の切羽詰まった小市民のしょーもないくわだてがあれよあれよと死体の山を築いてしまう、実話を元にしたストーリーです(嘘。冒頭で“これは実話である”と嘘のアナウンスでファーゴの特徴です)

ちなみに、日本人女性がファーゴの劇中で埋められたブリーフケースを探し求めて凍死したという都市伝説があるそうです。なにそれちょー面白そう……
これはもちろん嘘で、真相は悲しいかな自殺だったということですが、それを踏まえて映画化した「トレジャーハンター クミコ」という映画があるそうです。見たすぎる。

さて、映画のファーゴはもう20年以上前ですが、これを元にしたドラマ版が2014年に作られ、好評のままシーズン3まで続き、シーズン4も来年の公開が予定されています。日本でもシーズン3までNETFLIXで見ることができます。

映画のドラマ化作品は昔からたくさんあって、女の子型ターミネーターがかわいい「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ」や、ロバート・ロドリゲスの名作「フロム・ダスク・ティル・ドーン」なんかがあります。最近だと「ワックス塗る、ワックス拭き取る」でお馴染みベスト・キッドの後日譚が「コブラ会」がYouTube Redで配信されました。
面白い映画だったからと言って面白いドラマになるとは限らず、映画を薄く伸ばしたような凡作になってしまうことが多いです。前述の中ではコブラ会はすこぶる評判が良い(私は未見です)ですが、他はまあ、それなり。個人的にサラ・コナー・クロニクルズは好きです。また海外ドラマの悪い点である、終わり方を決めずに人気がある限りダラダラ続け、人気降下と打ち切られてしまったシリーズもあります。もちろん、「ウエストワールド」のようにとんでもない傑作もありますが。

そんな中、ファーゴのドラマ化は大成功の部類。もともと派手なアクションがあるわけでもなく、登場人物の悲喜交交ひきこもごもを淡々と見せるタイプの映画だったので、ドラマもとにかく脚本勝負というか、ぐいぐい引き込まれて先が気になってしまうストーリーになっています。

映画版とドラマ版のストーリーに繋がりはなく、いずれも雪の片田舎が舞台の物語です。それぞれ年代すら違うのですが、世界観は共有していて、同じ登場人物が出てきたりします。ファーゴ・ユニバースといった様相を呈していて、繋がりが分かるとニヤリとさせられますが、話は完全に独立しているのでどれから見ても問題ありません。というわけで、とりあえずシーズン1の感想など。

【シーズン1】概要・あらすじ

シーズン1はうだつの上がらないセールスマン、不気味な悪党、そして有能だけどどこかおっとりした警察官と、登場人物が映画によく似ています。実際、映画版の主人公であるWilliam H. Macyウィリアム・H・メイシーMarthin Freemanマーティン・フリーマンは入れ替えても成立しそう。特に後者はビルボ・バギンズの他に「シャーロック」のワトスン君としてお馴染みなので大好きな役者です。最近はMCUでも活躍してますね。

悪党はBilly Bob Thorntonビリー・ボブ・ソーントンが演じてます。前髪ぱっつんの不気味な殺し屋ながら、どこか飄々ひょうひょうとした愛嬌もあって、映画版の悪党とはややおもむきが違います。あと吹き替えが山路和弘やまじかずひろさんなんで、すごくイイです。はい。

あと、無能な上司というあまり良いキャラクターでは無いながら、「ベター・コール・ソウル」でお馴染みのBob Odenkirkボブ・オデンカークも出ていますが、残念ながら吹き替えは安原義人やすはらよしとさんではありませんでした。

中年になっても幼馴染にいじめられ、弟には馬鹿にされ、妻には罵倒され、何をやってもパッとしない日々を送る主人公。その日も故障して音がうるさい乾燥機を頑張って直そうとしたのに、余計に音がひどくなる始末。そのことを妻にボロクソに責められてプッツン、そこにあったハンマーで撲殺してしまいます。偶然知り合った謎の男に相談しますが、その男は凄腕の殺し屋だったのです。嘘を重ねるほどに泥沼にハマっていき、死体の山が築かれていく様は映画によく似ています。

ドラマ化に伴ってどうしても長い話になってしまう部分は、うまいこと登場人物を多くしたり、ギャングっぽい組織を絡めたり。それでいて全体的なファーゴっぽさはしっかり残っているという、すごくよくできたドラマでした。あまり居ないとは思いますが、映画版ファーゴは見てるけどドラマ版未見という方はドラマだと食わず嫌いせずに是非。もちろん、映画版をまだ見てない方も、ドラマから入るのも良いと思います。

【シーズン1】感想

というわけで、ネタバレです!
見てない人はダメー!!

冒頭は奥さんがチョームカつきました。正直なところ、ハンマーで殴った時、よくやった! って。主人公があまりに方方ほうぼうからいじめられてるんで可哀想で可哀想で、その後もなんとか逃げ延びてくれないかなと応援する気持ちで見てたんですが、そうは問屋が卸さないのがファーゴですねぇ。なので、シーズン前半は映画のように主人公が必死にあがいている様が可笑おかしいのと、もう一つ、殺し屋の魅力でぐいぐいひっぱられました。

ビリー・ボブ・ソーントン演じる不気味な殺し屋マルヴォ。映画版の悪党二人を足してさらに愛嬌を五割増ししたようなキャラクターで、殺しのプロというだけでなく、いつも質問に質問を返す嫌らしさや、かわいい変装もこなす愛らしさが魅力的でした。彼以外にも二人組で片方は聾唖ろうあなんていうすごい特徴ある殺し屋が出てたけど、やっぱりマルヴォがかっこよくて、迫力は負けてました。

シーズン後半になると、マルヴォがマジで恐ろしくなっていく感じがすごく良かった。前半はゲイっぽい変装してたり、ちょっと面白キャラだったのに、身代金の犯人を仕立て上げて殺す時の残忍さや、一人でファーゴの組織を壊滅させる実力。そして主人公と再会した時のエレベーターのシーンは衝撃的でサイコーでした。「あーなんで声かけちゃったんだよー主人公調子乗り過ぎ!」と思ったのは僕だけじゃないはず(笑)。しかし、あんなに恐ろしかった殺し屋があっさり死ぬのもまた、ファーゴっぽかったです。

そういえば途中で出てくるFBIの黒人コンビ、猫映画のキアヌでも一緒に出てました。仲良いのかな? っていうかお笑いコンビなのか……? 小さい方のJordan Peeleジョーダン・ピールはあの人種ホラー「ゲットアウト」の脚本、監督でもあるんですよね。ゲットアウトのメイキングで「ホラーはコメディやねん」って言ってました。前述のキアヌの脚本も書いてます。多才。

あ、メインキャラもうひとりいました、妊婦の保安官。映画と同じようなキャラクターながら、映画版のような魅力がなかった気がします。愛嬌がないというか、微妙にイラッとするんですよね。推理力はあって頭がいいはずなのに、上司に対してはうまく立ち回れないバカ正直さが見ててもどかしいと言うか。それだけ推理できれば、上司の人柄(絶対信じない)もわかるはずなのに、頭がいいんだか悪いんだかわからない行動がちょっとフラストレーションたまってしまいました。あと、ずっと証拠が無い状態で騒いでるのもなーと。

あと良かったのは、手の傷の悪化と主人公の状況の悪化がリンクしてるのとか、物語のお手本みたいでニヤニヤしちゃいました。映画版ではほぼ無かった銃撃戦なんかも新鮮で楽しかったですね。マルヴォがギャングを一人で壊滅させるところは見せ方も工夫してて最高でした。最終的にはマルヴォ大好きになっちゃったので、死んじゃったのだけは残念。ファーゴだから仕方ない。

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