【ネタバレ感想】映画「トゥームレイダー ファースト・ミッション」パンチ弱し!

トゥームレイダーと言えばシリーズ作品であるゲームが山程ある上、ブロックバスター映画も2作品(ずいぶん古くなってしまいましたが)作られているのでゲームを知らない人でも“アンジェリーナ・ジョリーのやつ”としてお馴染みかと思います。

ゲームの方は2013年にリブート版がリリースされ、主人公ララがトゥームレイダーになる前を描いたナラティブとPSで人気のあるアンチャーテッドなどに影響を受けたシステムが好評でシリーズ化、来月にはトリロジー三作目となる「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」が発売されます。ゲームの人気にあやかって映画版も去年リブートされ、新シリーズに沿った映画が公開されました。

僕もリブート以降のゲームのファンで、シリーズはいずれもプレイして、来月の発売も予約して待機中です。早くもレンタル開始されたリブート版の映画をゲームのファンとして厳しい目でチェックしてみました!

概要

2018年のアメリカ映画。118分。原題「TOMB RAIDER」、邦題「トゥームレイダー ファースト・ミッション」。監督はRoar Uthaugローアル・ユートハウグというノルウェー出身の人です。THE WAVEというフィヨルドでの津波を描いた災害映画の監督さん。災害映画としてはベタな展開ながら、緊迫感を盛り上げる見せ方、絶望的な状況で為す術もなく死にゆく恐怖がなかなか良かったと記憶しております。

映画のジャンルはアクション・アドベンチャー。いわゆるインディ・ジョーンズですね。でもコメディ要素は殆ど無いので、インディ・ジョーンズやアンチャーテッドのノリを期待すると少しマジメ過ぎるかもしれません。ゲームがそうなので仕方ない部分です。

音楽はマッドマックスやデッドプールのジャンキーXLだったりします。でもそれらの作品ほど印象に残りません。やはり映画のスコアは映画が面白くてこそですね。そう、このトゥームレイダーはあまり印象に残らない映画でした……

美術や洞窟なんかのデザインはかなりゲームに忠実で、ゲームやってればちょっとだけテンション上がります。敵の拠点の雰囲気もかなりゲームに近い。でもまあ、ゲームに忠実というだけで、史実には忠実ではないので。邪馬台国なのにかなり江戸というか和風のデザインですしね。

あらすじ

大企業クロフト社を経営するリチャード・クロフトは古代日本の女王卑弥呼の墓を探すため、娘ララ・クロフトを残して日本に向かい行方不明となってしまう。警察もリチャードは死亡したと判断したため、ララには父の会社を相続する権利が生じるが、父の死を認めたくないララは相続を拒否し、自転車便のバイトで生計を立てていた。しかし、クロフト社の経営を一任されているアナ・ミラーとの再会をきっかけに会社を相続しようとするが、そこで役員のヤッフェから父の遺品を受け取り、屋敷の地下にある父の研究室に向かう。そこには卑弥呼に関する資料とビデオレターがあり、ビデオレターには「卑弥呼の力を悪用しようとする組織から世界を守るため、資料を廃棄して欲しい」とメッセージが残されていた。ララは父を探すことを決意し、父が船をチャーターした香港に向かう。

トゥームレイダー ファースト・ミッション – Wikipedia

一昔前はゲームの映画化と言えば、ゲームを一度も遊んでないと思わしき、資本による原作レイプというイメージもありました(スーパーマリオ、ストリートファイター、バイオハザード……)。近年はゲームの地位も向上し、ゲームの世界観を維持しつつ映画としての面白さも追求しなければならないという難しいジャンルになったためAAA級のゲームほど映画化の噂が立っては消えといった状況になっています。マイケル・ファスベンファスベンダー主演のアサシンクリードは近年では比較的うまくまとめた映画化だったのではないでしょうか。アンチャーテッド、ラスト・オブ・アスなどは優れたナラティブから映画化の企画はあるらしいものの、なかなか実現していません。

そんな中、トゥームレイダーは既に二度、映画化されていることもあってかリブート版も比較的すんなりと映画が作られました。そしてストーリーも、2013年のリブート版トゥームレイダー一作目に“概ね”忠実に作られています。お父さんが行方不明なのも、トリニティという組織が暗躍してるのも、卑弥呼の島にENDURANCE号で行くのも一緒。
映画「インターステラー」もそうでしたが、船名として”ENDURANCE”は一般的みたいですね。しかし、この映画では船に日本語で「忍耐力」と描いてあるのは笑った。

ゲームではけっこうな人数の調査団として島に向かう途中で座礁するのですが、映画ではその辺をオミットして父を追って島へ向かうといったわかりやすい展開に。ゲームで出てきた原住民と言うか、卑弥呼の呪われた下僕的な存在もばっさりカット。それでも、リブート版の特徴だった、一人の少女としてのララがトゥームレイダーになるまでの成長を描くというテーマは映画版でもできるだけなぞろうとしているのがわかりました。

キャスト

主人公ララ・クラフト役はAlicia Vikanderアリシア・ヴィキャンデル。エクス・マキナのロボット役が有名と思われます。アクション映画の主人公にしては線が細く華奢な雰囲気ですが、リブート版ゲームの雰囲気にはとても近いです。

その他にはお父さん役にDominic Westドミニク・ウェスト、ときたま見るものの知らない役者さん。いつも悪役やってる印象なんですが、今回はすごくいい役です。

すごくちょい役でニック・フロストも出てました。いつもサイモン・ペッグとセットで出てる面白い人です。

感想

というわけで、ネタバレです!

いやぁ、惜しいですね。映画としてすごくダメなところは無いんですが、魅力的なキャラクターとか、かっこいいアクションとか、何か一つ飛び抜けている部分もこれといって無く…… 丁寧に作ってあって、しっかり出来た映画だとは思うんですが、印象に残る部分が何もなかったです。最後までは興味深く楽しめますが、一週間もすれば忘れてしまいそうな、パンチが弱い感じ。

ララはこの映画でかなり成長し、エンディングではララの代名詞とも言える2丁拳銃を手に入れ、次からは皆がよく知るララとしてバリバリのアクションを見せてくれそうな雰囲気で終わるんですが、残念ながらこの映画から二作目はなさそうです。

この手の映画でありがちな危機一髪も、見ている間はハラハラして楽しいんですが、昨今この手の映画は大量に作られていることもあって、エンディングを迎える頃にはほとんど忘れてしまう程度の印象です。一見華奢な女性がバリバリアクションをこなして活躍するというのも今は当たり前ですしねぇ。むしろその点で言えばアンジェリーナ・ジョリー版の方がケレン味たっぷりでしたし。

あと、後半の洞窟内の罠もインディ・ジョーンズ、ハムナプトラ、ナショナル・トレジャーといったこの手の映画と比べるとずいぶん雑だった気がします(笑)。まあ、罠を解いて進んでいくという部分はあまり重要ではないと割り切った仕様なのかな。それもありかなと思ったのであまり気にはなりませんでした。

(リブートの)ゲーム版ではララというキャラクターはわりと控えめなんですよね。それはプレイヤーが操作するというのもあるし、まだトゥームレイダーになる前のララだからというのもあります。しかし、この映画版ではその辺をゲームに寄せたせいで結果的にララが魅力の薄いキャラクターになってしまっている気がします。インディ・ジョーンズはとってもチャーミングで見てるだけでも楽しいし、ハムナプトラの主人公は嫁や義兄との掛け合いが面白い。この映画のララ・クラフトにはそういった魅力が欠けているため、彼女のストーリーをもっと見たい、とはなりませんでした。
2001年のトゥームレイダーではアンジェリーナ・ジョリーという女優が強引にカバーし、それが成功してたと思います。アリシア・ヴィキャンデルは容姿はとっても可愛いんですが、残念ながらキャラクターとしての魅力は不足しています。

映画としての魅力は今ひとつ欠けるものの、ゲームにはかなり忠実なのがもったいないんですよー。川に落ちて流されながら必死に助かろうとするシーン、滝にひっかかった大戦時の飛行機で危機一髪するところ、脇腹に枝が刺さって悶絶するシーン、大荒れの海岸を見て絶望するシーン、どれもゲームにあるシーンをちゃんと見せてくれているんです。
特にジャングルの中の敵の拠点に潜入するところなんかは、ゲームをプレイしていた方であれば「そうそう、こんな感じでいつもコソコソやってる(笑)」とニヤニヤできたのではないでしょうか。洞窟の中の卑弥呼の城みたいな建物もゲームまんまで、サイドミッション始まりそうでしたよね。

ゲームの映画化は本当に難しい、そんなことを改めて考えさせてくれる映画でした。アンチャーテッドの映画化も、見たい気持ちと見たくない気持ちの葛藤がますます激しくなりました。

あ、でも、映画としては及第点は余裕でクリアしているというか、何も考えずに見られるアクション映画としてはとても良くできた作品ですので、これを読んで「興味があったけど見送ろう」なんてことは無いようにお願いします! さっくり見れて楽しい映画なのは間違いありません。

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