フォースカーブ測定マシン『軸の秤』ってなんだ!?【キーボード Advent Calendar 2022】
この記事はキーボード #1 Advent Calendar 2022の6日目の記事です。
5日目はMachiaWorksさんの2022年の自作キーボード活動振り返り。 – MachiaWorksでした。
イントロ
へぇい。Romlyと申します。
コミケで自作キーボード島の末席を汚し、
『軸《じく》の本《ほん》』という、メカニカルスイッチのフォースカーブを調査してまとめた同人誌を作ったりしたことがあります。
もしお買い上げいただいた方がいたら、ありがとうございますm(__)m
軸の本2 Mechanical Switch Data Book 2 - Romly Shop - BOOTH
https://romly.booth.pm/items/1508722
して、みなさんは2022年もキーボードキットを組み立てたり、はたまた自作キーボードを設計しちゃったりしましたでしょうか。
私は、してません!(キリッ
では何をやっていたかと言うと、今年もフォースカーブ測定マシン 『軸の秤《はかり》』の開発に勤《いそ》しんでおりました。
軸の秤とは
フォースカーブ測定マシン 『軸の秤《はかり》』って何やねんって話ですが、小生が頑張って製作している、メカニカルスイッチのフォースカーブを測定できちゃう機械なのです。
ちなフォースカーブというのはメカニカルスイッチの荷重(反発力)を押した距離(深さ)ごとにプロットした折れ線グラフで、スイッチの特性を視覚的に捉《とら》えることができます。スイッチの種類(リニア、タクタイル、クリッキー)もフォースカーブから読み取れ、人の主観によらない絶対的なスペックが得られます。
通常、フォースカーブを測るにはそれなりに高価な業務用っぽい機器を使わなければならないのですが、ご家庭でもご自身で簡単に測定できてしまう夢のマシンこそが 『軸の秤』なのです。というわけで、いくつか自画自賛させてください。
フォースカーブ測定マシン「軸の秤」 - Romly Shop - BOOTH
https://booth.pm/ja/items/3560788
おすすめポイント
意外と本格的な測定機能
3Dプリンタによる自作感あふれる見た目とは裏腹に(?)、可動周りには光造形プリンタにも使われることのあるリジッドなパーツを使用。測定機能はなかなかに本格的で、しっかりとしたフォースカーブが得られます。
荷重は1g単位の精度を持ち、最小測定間隔は髪の毛の太さにも満たない驚異の0.01mm。測定開始時には自動でゼロ位置を判別し、押下時だけでなく、リリース時のカーブも測定可能。
またスイッチからワイヤーを繋げばアクチュエーションポイント(スイッチがONになる位置)も記録できます。
フォースカーブデータの再利用
測定したフォースカーブデータはマイクロSDカードに保存。数値のみの簡単なCSVデータなので再利用も簡単です。
また内蔵されているマイコンESP32のWiFi機能を活かしてWebサーバー機能にも対応。ブラウザから軸の秤にアクセスし、PCの大きな画面でフォースカーブグラフを確認できます。
かんたんメニュー式UI
ソフトウェア面は一番時間をかけて作り込んだので、本体にある7つのメカニカルスイッチで快適に操作できます。測定に関する設定や荷重センサーのキャリブレーションはメニュー式のUIで簡単操作。測定時には小さい画面にしっかりとフォースカーブを表示します。
フォースカーブ印刷機能
これは販売した本体には含まれない機能なのですが、外付けの感熱プリンタを使って測定したフォースカーブを印刷できちゃいます。いわゆるレシート用紙にモノクロで印刷されるフォースカーブはあたかもスイッチの健康診断かのようで愛らしいです。
今月末、大晦日のコミケでは、お持ちいただいたスイッチやキーボードのフォースカーブをその場で測定、印刷した測定票をお渡しする 〈フォースカーブ測定サービス〉をやるので、よければ是非お越しくださいー。
荷重のセグメント表示&パトランプ
こちらも過去の販売の後にパワーアップした機能なのですが、可動プラットフォームに新たにセグメントディスプレイを搭載。現在の荷重がひと目で確認できるようになりました。
そしてその左右には回転灯(のようなフルカラーLED)を搭載。稼働中は重機のように回転灯が光り、手持ち無沙汰な測定中も見た目で楽しませてくれます。
まだまだパワーアップ予定
とまあ、フォースカーブ測定マシンとしては、印刷機能も備えてだいぶ完成してきた感があるのですが、軸の秤の製作を通じて、作者の電子工作スキルも徐々に上がってきており、次々とやりたいことが増え、あれこれ試しているところです。
マクロパッド機能(Bluetooth/有線接続)
軸の秤本体にはCherryMX互換スイッチを7つも搭載しているので、せっかくならこれをマクロパッドとして使えれば、フォースカーブを測らないときもタンスの肥やしにならず、さらに堂々と
“自作キーボード”と名乗ることができます。
ESP32にはBluetooth機能が備わっているので、Bluetooth接続のマクロパッドとしてならソフトの改修だけで対応可能。ちまちまと実装を進めていたのですが、無線接続のくせに電源としてUSBケーブルは繋がなければならない点にモヤモヤしてました。
ところがひょんなことからCH9329という、USBキーボード(HIDデバイス)として振る舞えるICの存在を知り、試してみると簡単にUSBキーボードとしてPCに接続、キーの押下を送信できたのです!
そんなわけで現在は自作基板で直接CH9329を使う接続にも成功、具体的なマクロパッドのUIについて悩んだりしています。
ちなみにCH9329については、みんなのラボさんが解説書を出しているので、使ってみたい方は要チェックです。
USBキーボード接続機能
CH9329と同じメーカーがCH9350LというICも出していまして、こちらは逆にUSBのホストとなり、接続したキーボードとマウスの操作を受け取れてしまうのです。このICも軸の秤の試作基板で現在お試し中。メスのUSB-Aコネクタに繋いだMicrosoft Internet Keyboard Proでのキー押下/リリースイベントを受け取ることに成功しています。
これ、自分的にはかなり感動していまして、軸の秤の操作をUSBキーボードで行えるようになるので、WiFiパスワード入力なんかが楽になるが一点。
二点目はフォースカーブ測定機ならではの活用方法として、測定するキーボードを接続することで測定中のキーの押下イベントを受け取れる、つまりフォースカーブ上のアクチュエーションポイントも取れるようになるのです!
さらに三点目。前述のCH9329を使った有線キーボード機能と組み合わせ、USBキーボード → 軸の秤 → PCと、キーボードとPCの間に軸の秤を挟むことで、USBキーボードへの入力をそのまま、あるいはお好みにカスタマイズしてPCに送信できちゃいます。ハードウェア的にキーボードのリマップが実現できちゃうわけですね。
これは軸の秤の本懐《ほんかい》であるフォースカーブ測定とは全く関係ない機能ですし、同様の機能を持つデバイスは既に売ってますけど、メカニカルスイッチのフォースカーブ測定マシンがそういうことも出来るのが意味があるというか、ロマンだと思うですよ。
そして軸の秤にはマイクロSDカードスロットもありますから、リマップ設定をSDカードに保存、メニューから簡単に選択できるようにして…… ね、夢ひろがりんぐでしょ?
年末コミケ出ます
とまあ、そんな感じのフォースカーブ測定マシンを作っているのですが、今月末のコミックマーケット101で展示及び、 〈フォースカーブ測定サービス〉を実施します!
メカニカルスイッチ、またはキーボードをお持ちいただければ、その場でそのフォースカーブを軸の秤で測定、測定結果を印刷してお渡しするサービスです。ちなみにご利用料金は100円の予定ですが、SNSに測定表や軸の秤の写真付きで投稿していただける方は無料《タダ》ダヨ!
romly.com | Comike Web Catalog
https://webcatalog-free.circle.ms/Circle/16820244
実はこのフォースカーブ測定サービス、前回のコミケ、技術書典と自分の中ではもはや恒例なのですが、閑古鳥の鳴き声もまた恒例となっておりまして。イベントごとに2、3名の方が物珍しさに利用してくださるだけです(笑)。
前回コミケでは一度も測定せずに終わりそうだったため、こちらから頼み込んで周りのキーボードサークルの方のキーボードを測定させていただく始末(その節はご迷惑おかけしました)。
キーボード愛好家の皆様は愛用のキーボード、スイッチのフォースカーブぐらい把握してるぜって感じだとは思うのですが、実際に測る機会はなかなか無いのではないでしょうか。
よければ是非ご利用くださいー。もちろん見学も大歓迎ですどうぞー。
後記
いじょ!
いわゆる趣味としてのキーボードからは少しずれたところに向かってきてしまった気もしなくはないのですが、知識ゼロで、はんだ付けすらおっかなびっくりだった電子工作のスキルが徐々に身に付いてきてとても楽しいです。マルチメーター、安定化電源、リフロー、電子負荷装置、オシロスコープ。軸の秤の開発のせいで次々とお金がかかり、全くキーボードに回す資金がありません……
して、軸の秤、前述の通り試作中の機能が色いろあるので、来年は引き続きそれらを完成、販売できるところまでは持っていきたいなと。
軸の秤についてはツイッターなんかに写真をなんぼか上げてきたので、ハッシュタグ #軸の秤 で検索すると開発中の写真も含めていろいろ見れますです。
明日7日目は千葉千夏/あずさんの 〈まだ設計してないキーボードのアイデアを書き散らかす〉です。
ちなみにこの記事はM1 MacBook Pro本体のキーボードで書きました。 ← おまえそれでもキーボードサークルのつもりか!
この記事はここで終わりです。
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