【コミケ】フォースカーブ測定マシン「軸の秤」頒布します!【C99】
タイトル、嘘をついたかもしれない。頒布できるかはまだわからん!
コミケ(C99)出ます
25日現在、2年ぶりの開催となるコミックマーケットまで一週間を切ってしまいました。
弊サークル 『romly.com』も2日目、自作キーボード界隈の末席を汚させて頂く予定です。
小生はこれまで『軸の本(#軸の本)』2冊を通じ、メカニカルキーボードに使われているキースイッチのフォースカーブを計測してきましたが、それらは専用の機器を使用していました。
しかしながらM5Stackなどのムーブメントに触れる中で、フォースカーブを計測する機器を自分でも作れるのではという小さなアイディアに小生の鳥頭《とりあたま》は支配されてしまい、折あるごとにそのための勉強と開発に勤《いそ》しんでいたのですが、遂にお見せ出来る形にまとまったとので、2年ぶりのコミケというこのお誂《あつら》え向きの舞台で展示、あわよくば頒布したい所存なのです。
というわけで目下、寝る間も惜しんで作業しておるところなのですが、事前に告知させていただかなくては当日展示しても誰も見てくれないのは火を見るよりも明らか。なので少し宣伝をさせて下さい。
フォースカーブ測定マシン『軸の秤』
こちらが自作のフォースカーブ測定マシン 『軸《じく》の秤《はかり》』です。もちろん『軸の本』から派生した名前です。軸《キースイッチ》を測《はか》るからね!
OLED液晶とボタン7つ(もちろんCherryMX互換)を備えたレトロコンピューターの様な本体部と、上下に可動するプラットフォームを備えた堅牢な測定部で構成されており、下記のような特徴を持ちます。
『軸の秤』の特徴
- 可動プラットフォームにロードセルを備え、CherryMX等スイッチのフォースカーブを1g単位で測定可能。
- 押下時だけでなく、リリース時のフォースカーブも測定可能。
- 測定データはSDカードに簡易的なCSV形式で保存。再利用しやすいシンプルなファイルです。
- ゼロ位置(スイッチにギリギリ触れるか触れないかの無荷重位置)特定機能による測定開始位置の自動決定。
- 最小約10µm(0.01mm)~最大1mmまでの測定間隔設定機能。
- ご自身でスイッチからワイヤーを接続していただくことで、スイッチの作動位置/解放位置も記録可能。
- SLAプリンタにも使われる本格的なリニアスライド部品を使った可動機構。
- 測定部には大量の重しを内蔵し、安定した測定を実現。
- 給電はMicro USBケーブル一本でOK。
- 操作用ボタンにはもちろんCherryMX互換スイッチを使用可能。KailhのChocV1、Xスイッチ、MidHeight、ソケットもはんだ付け可能。
- ESP32とOLEDディスプレイ、キーボードによる簡単操作
- Webサーバー機能を使ったPCからの測定データ閲覧機能(やや不安定なのでエクスペリメンタル扱いで……)
- デザインやケーブルマネジメントにもこだわった3Dプリントによる組み立て式ケース。
- ほとんどすべての部品がスルーホール/表面実装兼用の低難易度PCB。と言っても今回はキースイッチ以外はんだ付け済みのものをご用意します。
このマシンをわずか6日後にせまったC99にて展示、あわよくば頒布しますので、ご興味のある方は是非弊サークルにお越し下さい。頒布と言っても3台~5台の予定なので、既にビビっと来た方(居ないか……)は迷うくらいなら是非お求めを!(笑) ただまあ、お値段が……材料費だけでもかなりゴニョゴニョ……で、12,000円~15,000円の予定です。
あまりに用途がニッチなので、日本全国でも欲しい方がいるかどうか怪しいのは重々承知しています。それでも、それでも1台も売れないというのは本当に悲しいので、ぜひぜひよろしくお願いします。
2台くらいは組み立て済み、あとは組み立てキットとして頒布するのがいいかなと(ぶっちゃけ組み立てキットを用意する方が手間がかかってしまう)。組み立てキットは自作キーボードキットの慣習に倣ってキースイッチとそのはんだ付けが必要なキットにしたいと思います。
ちなみに、本体部はとどのつまりESP32開発ボードに過ぎません。ESP32とシリアル変換ICのCH340G、そしてOLED液晶とSDカードスロット、キーマトリクスついでに圧電スピーカーを備えています。もちろん過半数のGPIOが測定部などの制御のために使用済みとなっていますが、プログラム自体はパソコンに接続すればArduinoで普通に書き込めます。フォースカーブを測定しないならESP32開発ボードとして使えなくもないので、無駄にはなりません。是非どうぞ(笑)。
ちょっとだけ裏話
軸の秤もといフォースカーブ測定マシンを自分で作ろうと思ったのは、電子工作における 『ロードセル』なる部品を知ったのがきっかけだと思います。 「あれ、これ使えばフォースカーブ測る機械作れるのでは」と……
そこからロードセルの使い方を覚え、ステッピングモーターの動かし方を覚え、OLED液晶の使い方を覚え…… そもそも電子工作が初めてで。M5Stackでは難しくなってきてESP32開発キットに移行し、OLED液晶にフォースカーブグラフが表示できるようになり、構造部の印刷にSLAプリンタでは限界を感じてFDMプリンタ(Prusa Mini)を購入し……
なんとかフォースカーブを測定するコア部分が形になった後も、当初のステッピングモーターやロードセルに付属のモジュール基板、市販のSDカードモジュール、ESP32 DevKitCなどを全てそのまま使う構想から、ESP32を直接基板に乗せるための回路図を勉強し、安定化電源を購入し、加熱台を購入してご自宅リフローを習得し…… 一方でFDMプリンタのコツもわかってきて、ケースの寸法を0.1mm単位で調整したり……
コロナ禍、暇な時間は殆どこのマシンのための勉強と開発に没頭していた気がします。おかげで(?)ハードウェア的な構造からプログラム、3Dプリントによるケースデザインまで、なかなか満足の行く仕上がりになったと思います。
リニア機構を作ってみたらステッピングモーターが全然回転しなかったり、フォースカーブグラフがどーしても後ろにずれてしまったり、デュポンコネクタがうまく作れなかったり、ありとあらゆる部品を購入して実物を見てはUSBシリアル変換でESP32に書き込めなかったり、シフトレジスタが動かなかったり…… 懐かしい思い出です。
そんな幾多のトラブルを乗り越えて完成した
『軸の秤』、是非ご覧になって下さい!
難点
ここまでで興味を持っていただけて、なおかつ万が一にも欲しいなんて思っていただけても、それなりのお値段です。その上、結局は素人が見様見真似《みようみまね》で作ったDIYマシンです。下記のような欠点も先に十分に理解していただきたいと思います。
プラットフォーム可動が遅い
プラットフォームの可動には28BYJ-48というステッピングモーターを使っていて、これは5Vで動かせるとか安価であるというメリットの一方、トルクが比較的弱く回転も遅いです。3Dプリンタなどの動作に慣れていると、軸の秤がプラットフォームを上下させる姿は
“のろまな亀”感あります。
もっとも、動作時はフォースカーブを測定しながら移動する為そもそも速く動かす必要がないのと、対象物がキースイッチなどせいぜい4mm程度のストロークということで、頻繁に測定するスイッチの位置(高さ)が変わらない限りはそこまで問題にならないかと思います。
ちょっと重い
前述の通り測定部は安定性のためにそれ自体が重くなっていて、約800gあります。でもこの重みはすごく満足感あっていいですよ。
精度はあくまで理論上
6mmの回転軸とステッピングモーターのステップから、論理的には最小10µm以下の単位でプラットフォームを上下させることが出来ます。とは言え全体の構造は3Dプリンタで出力したケースに依存していますし、回転軸もリニアスライドと100%完璧に平行に出来ているわけではありません。ついでに言うとそれだけの精度で動いているかどうか確かめるすべもなく……(笑)
この辺はあくまでDIYということで。キースイッチのようなもののフォースカーブを測定する分には十分なハズです。
自宅での3Dプリントによるケース
本体及び測定部の外装は自宅で3Dプリントしています。そのため積層痕や反りなどが見受けられますし、1つ1つ形が異なります。それも味として楽しんで下さい。
プログラムのバグ
プログラムもしこしこと一人で頑張って作っているので、当然バグや意図しない動作が多々出てくると思います。継続的に直していければと思いますので、気長に見守って下さい。前述の通り本体基板はUSBシリアル変換を備えていて、そのままPCからArduino等でプログラムが書き込めるようになっています。ソースコードはGitHubに公開して、ご自身でアップデートを書き込めるように出来たらと思います(もっとも小生がGitHub使ったことがないのでいろいろとお手間取らせてしまうかもです)。
脆い回路設計
見た目は表面実装部品で構成された立派なPCBですが、結局は電子工作の知識を持たない素人がなんとか動くよう作った回路です。保護回路的なものは無いので、過電圧とか逆接続とかで簡単に壊れてしまうかもしれません。
もっとも回路についてもプログラム同様、GitHubに公開できればと思いますので、詳しい方は是非ご確認頂いて、万が一まずい部分とかがあったらこっそり教えていただければと(笑)。
トラブルに的確に対応できない
万が一動きませんとなっても、そもそも作者が電子工作初心者につき、こうして下さいと的確なアドバイスが出来る気がしません…… 部品が足りなかったとか物理的な組み立て手順とかそういったサポートはもちろん出来る限り頑張りますが、 “動くまで手取り足取りサポートします”みたいなのは知識的に無理なのです。本当に申し訳ありません。前述の通り回路図等は公開するので、可能であれば、電子工作に詳しい方に聞ける環境のある方が望ましいです。むしろ自分が一番聞きたい…… 色々独学なので……
コミケでお会いしましょー
というわけで軸の秤、2021/12/31(金曜日)、コミックマーケット99の2日目テ-37aでお待ちしております。どうぞよろしくお願いします!
さて作業に戻ってギリギリまでプログラム改修&ケース印刷、パッケージングしなければなりませんので、取り急ぎこれにて!
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明確にコミケに出したいと思ったのはこの時だった気がします。まだProMicroで動いていたこの時から1年、思えば遠くに来たもんだ、です……
この記事はここで終わりです。
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