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【感想】NETFLIX映画「TAU / タウ」そこそこ面白かったよ

5年以上経ってる事を念頭に置いて読んでね!


TAU
TAU

概要

2018年制作のNetflixオリジナル映画(たぶん)。主演ここ数年の新感覚ホラーの雄It Followsイット・フォローズ (2014)でヒロインを演じたMaika Monroeマイカ・モンローと、デットプールの斧二刀流がかっこよかったヴィランのエイジャックスとして悪そうな顔をしていたEd Skreinエド・スクライン。後に配役が変更されてしまったので印象は薄いですが、ゲーム・オブ・スローンズの初代ダーリオ・ナハリスも彼が演じていました。いかにも英国のやんちゃなイケメンといった肉体派のイメージが強い俳優ですが、この映画では知性派の役で、いかにもIT企業CEOといった風の神経質そうなメガネ役です。

あらすじ

完璧なAIロボット製作のための被験者として発明家に拉致されたジュリア。だが、荒んだ生活の中で身につけた処世術を武器に、ハイテク施設からの脱出を試みる。
TAU/タウ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

ホラーやサスペンスでよくある、舞台や登場人物を絞ったミニマムな空間で展開するSF映画でした。同系統のSFジャンル映画としては、同じように外界から隔離された山荘でAIとの心理戦を描くエクス・マキナ (2014)や、これまた人里離れた研究所で殺人を犯したアンドロイドの暴走原因を探るモーガン プロトタイプL-9 (2016)が近いです。
とくに前者とこの『TAU / タウ』は企業家でなおかつ天才科学者が人里離れた屋敷でAIを開発している、そこへやってくる主人公、AIとの心理戦…… と、プロットも舞台も登場人物もよく似ていて、かなり意識しているのではないかと思いました。

吹き替えで見たんですが、AIの声が安原義人やすはらよしとさん。もちろんAIらしく抑えたトーンですが、どうしても80年台の古き良き洋画を見ている気分になる声です(笑)。調べてみたら原語ではゲイリー・オールドマンが声を当ててるんですね。そりゃあ安原義人さんがやるっきゃない。
ちなみにヒロインの吹き替えは坂本真綾さかもとまあやさん、AIを開発した科学者(企業家?)の声は高橋広樹たかはしひろきさんでした。NETFLIX作品って、ドラマも映画も吹き替えがちゃんとしてて安心できますよね。あと末尾にしっかりと各国語の翻訳スタッフ、キャストが出るのも素晴らしい。大切な情報ですからね。映画も全部これ入れてほしい。

というわけで、ネタバレです!
見てない人はダメー!!



感想

あらすじから察するに、主人公のジュリアとAIの頭脳戦、知恵比べのようなものを想像していました。冷酷なAIは命令通りに動く、だからそれを逆手に取った賢い立ち回りをすることで徐々に味方につけていく…… みたいな。

ちょっと期待しすぎたようで、全然頭脳戦とかそんな感じじゃなくて、もう最初からAIは主人公にデレッデレです。ここまでバカ、もとい、純真なAIはこの手のシリアスな雰囲気の映画では珍しいですね。勝手に怖いAIを想像したのがいけないんですが、ニール・ブロムカンプのチャッピー (2015)、あれくらいナイーヴなAIでした。ちょっと外の世界とか音楽のこと教えるだけで機密情報もパスワードもべらべら喋っちゃうんだもの。

知的好奇心で暴走してしまうAIっていうのは昔からよくあるので、安原さんの声と相まって少し古い映画の雰囲気を感じられてそれはそれで良いと思うんですが、そうするとそんなポンコツに人質の管理から何から信頼しきりの科学者は馬鹿なんじゃないか、と思ってしまう。これは頭がいいはずの設定が揺らぐのでよろしくないと思いました。まして、バグが多くて不安定だということをこの科学者は知ってるんですね。なおさらそんなのと人質を日中、毎日二人きりにしたらどうなるか想像つきそうなもんですけど。その辺の本来賢いはずの悪役がバカっぽく見えているのが脚本が失敗してるのではと感じてしまう1つ目。

もう一つは主人公の設定。娼婦まがいのことをしてスリで生計を立てている女性で、あらすじにもそれを武器にして脱出を試みるみたいなこと書いてありますが、全然そうじゃなかった。なにしろ前述の通りAIがバカ正直でおしゃべり大好きなので、ちょっと「人っていうのはね…」「外にはね…」と話しかけるだけで、あとは鍵だなんだ大事なこと全部教えてくれるため、主人公のしたたかという設定が生かされることはほぼなし。スリ設定も冒頭であれだけ描いたわりには、道具ちょっと隠すぐらい。
これだったら冒頭の主人公がすさんだ生活を送っている描写はいらないのではないかとすら感じました。その点は前述の『エクス・マキナ』『モーガン』の方が映画にとって必要なシーンの取捨選択がうまいような気がしました。

悪いことを先に書いてしまいましたが、じゃあこの映画が見る価値なしかっていうとそんなことは全然なくて、コンパクトにまとまったSFスリラーとしては映像、舞台、もちろんストーリーも粗こそあれクオリティは平均より全然高くて、最後まで興味深く見ることができると思います。SF好きなら知識として押さえておきたい映画。

だってロボット出てくるし(笑)。なんだかおしゃれな美術館にありそうなモダンアートな三角形のオブジェに変形するロボ、これだけでもうメカ好きとしては見るしか無いでしょ…… 同じくNETFLIX映画のスペクトル (2016)を見た方はわかると思うんですが、あの一瞬しか出ない犬型メカ兵器だけで十二分に見る価値がありましたよね。そんな感じ(笑)
あとはここ数年のSF映画では定番となった“ドローン”も出てきますが、この映画では多数のドローンが強調して動作する姿が少しユニークでした。そして血痕のお掃除をするんですが、通ったところだけ綺麗になっていく様がかわいい。血痕の面積に対してドローンは小さすぎるんですが、ドローン間でマッピング情報を共有し無駄なく掃除していくんだろうなぁという想像力を掻き立てる、妙に丁寧な描写でした。物語にそこまで影響しない細かい描写が凝ってるのって、このジャンルが好きなんだろうな、こういう映画作りたかったんだろうなっていうのが何となく感じられていいですよね。

というわけで、SFが好きなら安心しておすすめできます。あらすじから『エクス・マキナ』クラスの巧妙な映画を想像してしまうとちょっと肩透かしを喰らいますが、よくあるSFスリラーやサスペンスとして見れば全然最後まで楽しめます。
あとはゲイリー・オールドマン好きなら声だけでも十分楽しい。吹き替えで見ても安原さんだからそれはつまりゲイリー・オールドマンですし(笑)

いやぁしかし、この品質の映画やドラマが黙っててもぽんぽん追加されて、しかもNETFLIXでしか見られないってんだから、他の動画サービスにはない、ものすごい強みですよね。代えが効かないってのはさすがNETFLIXです。

この記事のタグ[This article is filed under]: 映画[Movie] | ネットフリックス[Netflix] | レビュー[Review]


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